オーストリア写真紀行

セメリンク鉄道

オーストリアの世界遺産のひとつであるセメリンク鉄道(Semmerring bahn)を訪れてみよう。少し前まではウィーンから鉄道を何回か乗り継がないとここは訪れることができなかった。2012年からこの路線にも ÖBBの誇るrailjetが導入され、乗り換えなしでセメリング駅などを訪れることが可能になった。  

石造りの二重高架橋の上を走るEC

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セメリング鉄道については少し説明が必要だろう。現在内陸国であるオーストリアだが、第一次世界大戦以前のハプスブルク帝国時代までは、アドリア海沿岸の現在イタリア領やスロベニア領、クロアチア領となっている地域も帝国の領土であった。そしてその地にはトリエステなど多くの海軍基地が存在していた。映画「サウンド・オブ・ミュージック」に登場するトラップ大佐はオーストリア帝国の元海軍大佐という設定であったが、これは作り話ではなく事実に基づいたことだったのだ。

これらの土地と帝都ウィーンを結ぶ路線としてして計画されたのがセメリンク鉄道である。アルプス越えをするため大変困難な工事であったが、イタリア人技師カール・フォン・ゲガにより現在まで残る多くの高架橋とトンネルを作って1854年に開通している。                                                                         現在はウィーンマイドリング駅からグラーツ行きのrailjetがほぼ1時間おきに出ており、そのうち何本かがセメリング駅に停車する。このrailjetを利用すれば1時間10分ほで到着するが、ECやRを乗り継ぐ方法だと2時間くらいはかかってしまう。

セメリンク駅に到着するrailjet

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セメリング駅にあるカール・フォン・ゲガの記念碑

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セメリング駅の中にある博物館

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セメリンク鉄道に乗りセメリンク駅に行くのは簡単になった訳だが、観光案内書などに載っている美しいアーチ橋は自分が列車に乗っていると窓からちらっと見えるに過ぎない。どうしても石造りのアーチ橋を見たければそれが見られる場所まで歩いていくしかない。セメリンク駅から二つ手前のブライテンシュタイン駅までハイキングコースが整備されており、健脚の人は挑戦してみるとよい。ただし、一部の日本の観光案内書ではいとも簡単に歩けるように書かれているが、現地の人は登山支度で歩いていてハイキングと侮ってはいけない。コースのところどころにある案内板はすべてドイツ語であり、途中分岐もいくつかある。二つ手前の駅まで半日は山を登ったり降りたりする覚悟が必要だ。(2013年発行のS社の案内書にある“所要30分”は明らかに間違い)

コース途中にある療養所

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セメリンク駅の隣駅のWolfsbergkogel駅

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ハイキングコース(スタート地点付近)

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コース途中にあるアーチ橋

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遠くの山々と高架橋

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ご紹介した前3枚の写真の撮影ポイントまで、セメリンク駅を出てから1時間くらいである。途中撮影をしながらではあったが、平坦な道ではなくそれなりの登山装備は必要だろう。ハイキングコースは写真に見えるブライテンシュタイン駅まで伸びているのだが、この景色から見てもそこまで数十分で到着することは不可能なことが分かる。このあとコースは一端谷まで降りて、その後駅のある山の中腹までまた登りである。なかなか手強いコースではあるが、要所要所に撮影ポイントが存在し、施設も整っているので天気が良い日であればきれいな景色を堪能することができるだろう。ウィーン市内では味わえない雄大な自然に触れてみるのもよいかもしれない。

<文・写真:古川 隆>

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