2012年06月20日

【アート】クリムトイヤーの多彩なイベントプログラム

オーストリア美術史上最大の画家のひとりグスタフ・クリムト(1862〜1918)が2012年、生誕150周年を迎えています。現代美術への道を切り拓いた天才画家を記念する年にウィーンでは、かつてない数多くのクリムト作品が展示されます。多彩な特別展で巨匠の華麗な世界をお楽しみください。

長年の修復・保存作業が完了した応用美術館(MAK)では、2012年にグスタフ・クリムト生誕150周年を記念する特別展が開催されます。その中心は、ブリュッセルのストックレー邸食堂壁面を飾るモザイクのため、クリムトが制作した原画で、これはMAKのクリムト・コレクションの頂点をなすものです。これら9点に上る原画は、いずれも、幅約1メートル、高さ約2メートルのもので、1910年から1911年に制作されました。制作開始にあたってクリムトは、壁面装飾画の細部に関する大まかなコンセプトから出発しました。制作過程で原寸大の原画に変更が加えられ、今日知られる大作が完成したのです。修復と保存作業の中で、クリムトによる変更と制作方法が確認され、さらにモザイク制作への画家の指示と、ウィーン工房に保存されていた当時の品々が比較されました。

演劇博物館では、グスタフ・クリムトの名高い作品「ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)」を中心とする特別展が開催されます。「裸の真実」は、身長2メートルに及ぶ堂々たる女性像で、鑑賞者に鏡を向けています。この作品は、オーストリアの作家へルマン・バールが所蔵していたもので、彼の他の遺品とともに、演劇博物館に保存されています。バールはクリムトと親交があり、当時の進歩的な美術の後援者でした。クリムト作品をめぐる激しい論争の中でも、バールは「反クリムト」という文章で、画家を擁護しました。

ウィーン・ミュージアムには貴重なクリムト・コレクションがあり、2012年に初めて全所蔵品が展示されます。素描は400点に上り、クリムトの素描コレクションとしては世界最大のものです。その中には最高傑作や、初期から晩年まで画家の全制作段階を網羅するスケッチや下絵の数々が含まれています。これら全所蔵品が展示されることによって、テーマ別作品グループの多彩な側面を一望することができます。数多くの素描と並んで、幾つかの絵画作品も展示されます。その中で最も重要なものは、1902年に制作された「エミーリエ・フレーゲの肖像」で、これはウィーン・ミュージアム所蔵の最も重要な美術作品です。

オーストリア民俗博物館は、エミーリエ・フレーゲ(1874〜1952)の遺品に含まれていた350点に上るテキスタイル見本コレクションを所蔵しています。クリムトの伴侶でありミューズであった彼女は、オートクチュール・サロンの経営者でした。ウィーンのマリアヒルファー・シュトラーセにあったサロン「フレーゲ姉妹」で、彼女は上流市民のため、オリジナルなドレスの数々をデザインしたのです。特別展では、豪華な刺繍や繊細なレース、精巧なボーダーやユーゲントシュティル・モチーフのテキスタイルなどが展示されます。テキスタイル見本の大半はヨーロッパ東南部各地で生産されたものです。

キュンストラーハウスの特別展では、グスタフ・クリムトと、当時の中欧で最も重要な美術家団体であったキュンストラーハウスとの芸術的・人的交流が紹介されます。クリムトは1891年から1897年までキュンストラーハウスのメンバーで、団体の様々な活動に参加していました。キュンストラーハウスの人的ネットワークによって、クリムトは多くの機関から公的な制作委嘱も受けています。さらにキュンストラーハウスの資料室には、クリムトの生活と作品に関する数々の文書、手紙、写真などが保管されています。

ベルヴェデーレ上宮では、現在開催中の特別展「グスタフ・クリムト/ヨーゼフ・ホフマン:現代美術のパイオニア」(ベルヴェデーレ下宮で2012年3月4日まで)に続いて、2012年7月半ばから特別展「グスタフ・クリムト生誕150年」がスタートします。世界最大のグスタフ・クリムト絵画コレクションの作品を中心に、これまでほとんど顧慮されることのなかったクリムト作品に対する評価の変遷にも焦点が当てられます。

  • Gustav Klimt: Erwartung und Erfüllung, グスタフ・クリムト:期待と充足。ストックレー邸壁面を飾るモザイクの原画, 2012年3月21日〜7月15日, MAK Österreichisches Museum für angewandte Kunst/Gegenwartskunst, Stubenring 5, 1010 Vienna, www.mak.at
  • Gegen Klimt. Die "Nuda Veritas" und ihr Verteidiger Hermann Bahr, グスタフ・クリムト:「裸の真実」とクリムトの擁護者へルマン・バール 2012年5月10日〜10月29日, Österreichisches Theatermuseum, Lobkowitzplatz 2, 1010 Vienna, www.theatermuseum.at
  • Klimt. Die Sammlung des Wien Museums, クリムト:ウィーン・ミュージアムのコレクション、 2012年5月16日〜9月16日, Wien Museum, Karlsplatz, 1040 Vienna, www.wienmuseum.at
  • Objekte im Fokus: Die Textilmustersammlung Emilie Flöge, 注目の的:エミーリエ・フレーゲのテキスタイル見本コレクション 2012年5月25日〜10月14日, Österreichisches Museum für Volkskunde, Laudongasse 15-19, 1080 Vienna,www.volkskundemuseum.at
  • Gustav Klimt und das Künstlerhaus グスタフ・クリムトとキュンストラーハウス, 2012年7月6日〜9月2日, Künstlerhaus, Karlsplatz 5, 1010 Vienna, www.k-haus.at
  • 150 Jahre Gustav Klimt, グスタフ・クリムト生誕150周年 2012年7月12日〜2013年1月6日, Oberes Belvedere, Prinz-Eugen-Straße 27, 1030 Vienna, www.belvedere.at
  • クリムトイヤーの展覧会 最新情報 www.klimt2012.info
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