オーストリア写真紀行

ヴァッハウ渓谷の旅(デュルンシュタイン) 後編

古城を見ながら進んできた船は、やがてシュピッツの船着場に到着する。川岸に桟橋が1本出ているだけの簡単な施設のため先に到着した船が出航するまで、船首を川上に向けて流れに逆らってその場待機である。このときは反対航路のメルク行きの船が団体客を乗船させていたようでかなり待たされた。

シュピッツ(Spitz)の船着場

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シュピッツを出港すると左舷に中世の要塞教会が見えてくる。 このドナウ川がいかに軍事的に重要であったか思い知らされる。

要塞教会

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要塞教会を過ぎてしばらく行くとドナウが大きく蛇行している前方の岸辺にデュルンシュタインの聖堂参事会修道院教会の塔が見えてくる。船はそのままクレムスまで航海を続けるが、今回はここで下船してみよう。

デュルンシュタイン(Dürnstein)のシュロスホテルと聖堂参事会修道院

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岸辺の船着場からデュルンシュタイン(Dürnstein)へ入るには城壁の下にあるトンネルのようなところをくぐっていく。上に上がるとすぐ左に聖堂参事会修道院の入り口がある。 

聖堂参事会修道院の入り口

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修道院の中に入り中庭を抜けると教会があり、船から見た教会の塔へ行くことができる。デュルンシュタインは本当に小さな城壁都市で、この修道院の隣には元お城だったシュロスホテル・デュルンシュタイン(Schloßhotel Dürnstein)がある。このホテルは夏期のみの営業だがなんと5ッ星の高級古城ホテルである。このホテルのレストランからはドナウ川が一望できるのでここで昼食をとることにした。 

シュロスホテル・デュルンシュタインのレストランから見たドナウ川

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小さな町で人通りもそれほど多くない。ホテルに行くにはこれも細くてかわいいハウプト通りを歩いて行き、行き止まりの駐車場の手前がホテルの入り口である。古城をそのままホテルにしているので、いわゆるホテルの感じではない。とにかくテラスレストランを探して川沿いの席をキープする。ほとんど人の気配のしないホテルであったがレストランは人気のようでたくさんのお客さんが入っていた。ここで食事をしながら、ドナウ川を眺めているとここちよい風が吹いてきて時間の経つのを忘れてしまいそうである。ヴァッハウ渓谷の旅をしてこの景色を見ないのはいかにももったいないことだ。料理も5ツ星ホテルだけあってウィーンの下手なレストランとは比べものにならないくらいおいしかった。こういうホテルでゆったりと長期滞在ができたらと思いながらホテルを後にした。

細くてかわいいメインストリート ハウプト通り

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腹ごしらえができたところで、いよいよケーリンガー城趾に登ることにしよう。昼食でビールとワインもたくさん飲んでいるので、ちょっと無謀かもしれないがもともと健脚自慢の筆者は決行した。途中から道がかなりきつくなるので、みなさんがもしケーリンガー城趾に登るのであれば、体調に十分気をつけて決してアルコールなど飲んだ後には実行しないことをお勧めする。 

城趾へ登る途中にあるブドウ畑

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ハウプト通りの城門を抜けた左側に城趾へ登る道がある。城趾は見えているがなかなかたどりつかない。余裕を持って登ることと夏場であればかなり汗をかくので水を持参したほうがいいだろう。

ケーリンガー城趾

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ケーリンガー城趾へ登る途中から見たデュルンシュタインとドナウ川

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デュルンシュタインでのひとときを満喫したあとは、列車でウィーンに戻ることになる。ブドウ畑とケーリンガー城趾を左に見ながら駅へ向かうことになる。

 ブドウ畑とケーリンガー城趾

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 デュルンシュタイン駅

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デュルンシュタインの駅は現在無人駅となっており、停車する列車の数も少ないので駅に行っても人の気配がない。本当にここに列車が来るのかと不安になるが、時間になるとトンネルから突然列車が現れる。ホームがなく線路が何本かあるだけなので、どこで列車が停まるか全くわからない。おおよその見当をつけておいて、列車が止まったらそこまで走るしかない。それと駅舎はあるがトイレはないので、予め町の中で用を足しておいた方がいいだろう。

クレムスでウィーンのフランツ・ヨーゼフ駅行きの列車に乗り換えて、楽しかったこの旅も終わりとなる。ツアー旅行の場合は予めヴァッハウ渓谷の旅がセットになっていることが多いようだし、ウィーンから日帰り旅行のパックツアーも出ているようだ。ただ残念なのは団体用観光バスを移動に利用することだろう。決められた時間通り、次から次へとせかされる旅行ではこのヴァッハウ渓谷の旅の良さは半減してしまう気がする。シュロスホテルのテラスレストランでドナウ川を眺めながら時間を気にせず食事をする、汗をかきながら城趾へ登ってみる、そういう体験は一生の思い出として残るだろう。是非みなさんもゆったりとした旅を楽しんでみて欲しい。

<文・写真:古川隆>

 

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