オーストリア写真紀行

ウィーンの乗馬クラブ

オーストリアやドイツを列車で旅していると車窓から豊かな自然の中を馬でのんびりと散策している風景をよく目にする。ヨーロッパの国々で馬は身近な存在で、特にオーストリアやドイツは乗馬の裾野が広いことが知られている。ウィーンも例外ではなく、いくつかの乗馬クラブがあるが、ドナウ川とドナウ運河の間フライドナウ(FREUDENAU)にある乗馬クラブを訪れてみたので紹介しよう。

乗馬クラブへと続く道

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ウィーンで乗馬というと「スペイン乗馬学校」を思い浮かべるかもしれないが、あれはハプスブルク帝国時代から続く特別な乗馬学校で誰でもスペイン乗馬学校で学ぶことはできない。普通の人はもっと気軽に馬に乗れる乗馬クラブに入会し乗馬を楽しむことになる。

敷地内でのんびりと草を食む馬

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今回訪問したのはフライドナウにあるASKÖ REITVEREIN FREUDENAUというクラブで 、ウィーンの中心部から車で15分程度のところに位置していて広大な敷地の中にそのクラブはあった。

 ASKÖ REITVEREIN FREUDENAUのクラブハウス

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先にお断りしておかないといけないが、このクラブは日本の観光地にあるような観光用の おとなしい馬に乗せて馬場を引き馬してくれるようなものではない。きちんと乗馬の技術のある人が乗馬を楽しむクラブであるので、ある程度の乗馬の経験がなければ危険を伴うのでビジターとして受け入れてはくれない。特に外国人のビジターは言葉の問題もあるので、技術のチェックも兼ねて最初の1鞍は馬場で教官からのレッスンを受けることになる。

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ウィーンを訪れて乗馬をしてみたいという人はそれほどいないと思う。私は日本でも乗馬をしているので、今回コムツアーズさんに特に頼んでビジターとして受け入れてくれるクラブを現地で探してもらい騎乗できることになった。最初はウィーンの森の外乗(クラブ外騎乗)だけを希望したのだが、オーストリアでは公道を騎乗するためにはライセンスが必要なため、前述のように技術や会話力(乗馬用語を含む)のチェックを兼ねた馬場でのレッスンを一日目に受けることになった。

馬場の外周に柵のない開放的な馬場 

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まず、クラブに着いて驚いたことはその広さである。 日本でも山梨県などにある広い乗馬クラブを訪れたことはあるが、それとは比べものにならないくらい広大な敷地である。クラブに着いてからクラブハウスがどこにあるか、何回か聞いてからやっとたどり着いたくらいである。そして、この乗馬クラブではすべての馬場の外周に日本のような柵が設置されていないことである。よほど会員の技術レベルが高いのか、馬の調教が行き届いているからに違いない。

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馬場も芝生の広大な敷地の中に点在していて、そこで会員は自由に各々騎乗をしている。

厩舎の横にある放牧場

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こういった環境の違いをみるとヨーロッパでは馬といっしょに生活をしてきた長い歴史があり、馬は家畜ではなく家族の一員なのだと痛感する。この乗馬クラブにいる馬はオーストリア固有種といわれる種類で、オーストリアで乗馬用に長い間改良されてきた品種である。性格はとてもおとなしくて人なつっこく、手入れをしていても馬装をしていても蹴られたり噛まれたりする心配は全くない。日本のクラブでいつもこのことを心配している私は感心してしまった。 

 厩舎の窓から顔を出す馬

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日本で私の所属する乗馬クラブの馬は圧倒的にサラブレッドが多い。サラブレッドは競争するために品種改良された馬でお世辞にも乗馬用に向いているとは言えない。とにかく気性の激しい馬が多い。他の乗馬クラブでは中半血種と呼ばれる混血の品種が多くいて性格はおとなしいが姿形はサラブレッドほど格好よいものではない。ウィーンの乗馬クラブではほとんどがこのオーストリア固有種という馬で、姿形もよく性格もおとなしく、何よりも乗り心地がとてもいいのである。

大きな覆い馬場(室内馬場)

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このクラブには大きな覆い馬場(室内馬場)があった。訪れた時は気候のよい季節で晴れていたので覆い馬場での騎乗はなかったが、オーストリアのように冬が長く厳しい土地では覆い馬場の設備は乗馬クラブにとって必須なのであろう。うらやましい限りである。

厩舎の風景

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このクラブの面白いところは平日は夕方からの営業ということである。夏時間の5時頃はまだまだ太陽は高いところにあり、9時頃まで外は明るいので、たっぷりと乗馬を楽しむことができる。私が着いた時、クラブは閑散としていたが、その後ウィーン市内で仕事が終わった会員が続々と詰めかけてきてクラブはあっという間に賑やかになった。

外乗から戻った筆者

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市内から車で15分程度でこれだけの広さと施設の整った乗馬クラブが存在するということは、普通の人が普通に乗馬を楽しむことができるよい環境であると思う。こういう環境がオーストリアやドイツでの乗馬の裾野を広げているのだろう。

初日の馬場でのレッスンの結果、外乗を許された私は翌日教官の付き添いのもと2騎でフライドナウの鬱蒼たる森の外乗を2時間ほど楽しむことができた。途中開けた場所で教官が難しい技術である「斜め横歩」の模範演技などを見せてくれた。帰り際広大なクラブの敷地内にある障害馬術場にもよることができた。小学生くらいの子供がたくさん障害の練習をしていて、日本の子供たちがグラウンドでサッカーの練習をするのと同じような感覚だった。この地では乗馬は普通のスポーツだと言うことを改めて痛感した。

いろいろなことが経験できるウィーンである。あなたも何かやりたいことがあったら迷わずコムツアーズさんに相談してみるとよいだろう。是非ウィーンでの楽しい経験と思い出を作って欲しい。

<文・写真:古川隆>

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